多様な生き方を選択できる社会に多様な生き方を選択できる社会に

今回の衆院総選挙において、立憲民主党からは27人の女性新人候補が衆院総選挙に挑んでいます。2年前の参院選挙で初当選した1回生の女性議員から見て国会はどのように映ったのか。石垣のりこ、打越さく良、岸真紀子、田島麻衣子各参院議員に国会にこの2年間を振り返りながら語り合ってもらいました。

岸真紀子(きし・まきこ)参院議員 全国比例・1期

「議論の前提がいまだに男性主体の社会モデル」

石垣)国会は、男性が幅をきかせているところではありますよね。人数が圧倒的に違いますから。本会議場を見回したときに驚くほど男性の方が多い。

岸)うち(立憲民主)の会派だけ見ると、特に参院は女性が3割以上いますが、ホワイトアクション(※1)のときに衆院本会議を傍聴に行ったら、あまりにも女性が少なくて愕然としました。

田島)本会議場では新人が前から座っていきますが、女性が白いジャケット着ている姿は前の方にポツポツと点在しているだけで、後方にいくにしたがってダークスーツが広がっていたのが印象に残っています。

石垣)社会の鏡として国会を見たときに、女性の声を反映するためには人口の半分を占める女性の議員比率を上げる必要があります。国会議員は国民の皆さんの代弁者ですから。

打越)女性だからいいわけではなく、暮らしのなかでの女性の困難な実態を理解し、それを代弁する人でないといけない。

岸)いろいろな考え方があっていいのですが、議論の前提がいまだに男性主体の、男性を世帯主とした社会モデルになっている。それを中心に考えるとすべてうまくいきません。

打越)終身雇用は前提ではなくなっていますしね。

石垣)にもかかわらず、「男が稼いでやらないといけない」「女は家にいた方が世の中うまく回る」という考えが根強くある。

打越)家にいて稼いでくる男性に頼っていればいいというかつての前提は崩れてきていますが、いまだに女性は非正規雇用で雇用の調整弁として扱われている。それがコロナ禍でまっさきに痛手をこうむったわけです。本当に女性たちの声をしっかり聴かなくてはいけない。

※1 東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗前会長の女性蔑視発言を受け、抗議の意思を示すため、野党の女性議員を中心に女性参政権のシンボルカラーとされている「白色」を身に着けて衆議院本会議に出席した。

石垣のりこ(いしがき・のりこ)参院議員 宮城県選挙区・1期(写真左)

「男女ともに生き方の多様性を広げていく」

田島)今年の通常国会で、育児・介護休業改正法(※2)が成立しましたが、少子化と男性の育児や家事の時間は、ものすごく密接に関連しています。委員会の質問の時、そのデータを示して「男性がきちんと家事や育児をしないと子どもは増えない」と発言したら、議場がしーんとなりました。「そうだそうだ」と声が上がるかと思ったら全く逆。意思決定に関わる国民の代表が偏っていたら社会は変わらない。

打越)法案の検討過程であ然としたのは、「男性には自分にしかできない仕事がある」という見解がそのまま前提とされたことです。

岸)男女を問わず、その人にしかできないことはどこの社会にもある。それでも、うまく変わっていかないといけないはずです。

打越)「男性には中断できない仕事があるけれど、女性は中断できる」という、そういう意識で社会を組み立てている限り少子化はなくなりません。

石垣)女性の生き方の多様性を広げていくことは、同じく男性の生き方の多様性を広げていくことです。ただ、既得権益という点では、男性の方が今まで持っていたものを手放すことへの怖さがあるかもしれません。

打越)法案の審議のときに、関連するいろいろなデータが出てきましたが、男性で育休を取れているのは、ほとんど雇用が安定している収入の高い人たち、余裕がある人たちです。若い人たちを非正規に追いやっておきながら、そうした実態を見ずに「育休を取れ」と言われてもどうなのかと思いますね。

打越さく良(うちこし・さくら)参院議員 新潟県選挙区・1期

エビデンスを丁寧に見る政治が必要

打越)国会で驚いたことの1つは、「データを見る政治」をやっていないこと。コロナ対策でも浮き彫りになりましたが、あまりにもエビデンスがない。

田島)ほんと数字を参照しないですね。

岸)「統計」と言っても、どういう取り方をするかで結果が変わってくる。今の政府の統計は注意深く見ていく必要があります。

打越)政府はEBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング(※3)、証拠に基づく政策立案)に取組んでいますが、まずは政策ありきで、それにデータを後付けしているのが実態です。PBEM(ポリシー・ベースト・エビデンス・メイキング)と自嘲する官僚もいらっしゃるとか。エビデンスを丁寧に見る政治が必要です。

※2 男性が育児休業を取得しやすくなる制度を定めたもの

※3 政策の企画をその場限りのエピソードに頼るのではなく、政策目的を明確化したうえで合理的根拠(エビデンス)に基づくものとすること。

田島麻衣子(たじま・まいこ)参院議員 愛知県選挙区・1期

意見の多様性が政策の厚みになる

岸)多様性という意味では、例えば、結婚をしたら、子どもを産んだら、仕事をやめなければならない。育休明けの時に保育所に預けられないから仕事をやめざるを得ないとか、今は選択ができる社会になっていません。それぞれが上げる声は、決して一人の声ではない。声に出していないだけのサイレントマジョリティーだったりします。そういう声を拾い集め、他の人にもいかに納得してもらえるかを考えながら質問をしています。

田島)例えば女性、LGBT、子育て中とか、属性だけでなく、意見の多様性が政策にどれだけ厚みを持たせられるかに結び付くと感じています。地元でもいろいろな意見が出てきますが、まずは反対の意見も含めてきちんと聞いていきたい。
 途上国に入っていたときも思ったのですが、人々は毎日一生懸命ぎりぎりのところで生きているので、自分が本当に何を必要としているか、を立ち止まって内省する時間さえ取れないのが現状だと。私は、何が必要かを感じられる気持ちをもって中に入っていけるよう心がけています。

打越)声を上げられない人も含めてさまざまな人たちの現実、直面している困難を一つひとつ丁寧に見ていく。応えていく。さまざまな立場の人の現実を受け止めて困難を乗り越えていく手助けをする。いまの人権や自由を制約する政治を変えていきたいです。
 省庁の人たちと話をしていると、野党の1回生議員に対しても「その問題意識、興味深いですね」と奔走してくれる。「この通達でできませんか」とか、現場で困っている人たちの声に反応してくれるので、私たちもきめ細やかに動きたいと思っています。

石垣)世の中には多様な生き方があり、それぞれが違うという考え方から出発するのが基本です。では多様とは何かと言うと、岸さんも言われたように、やはり選択ができることだと思います。ライフステージはさまざまで、働きたい時期、子育てに専念したい時期と、人それぞれです。人生のなかで別の選択肢を取りたいと思ったときに、選択の自由として、制度としてきちんと保障していく必要があると思います。
 そういう意味では、自分としてのこうあるべきという考え方や、理想的な社会はありますが、いろいろな考え方を否定するのではなく、幅広く選択できる社会が望ましい。その人がまた違う選択をしたいと思ったときに、別の道が開かれることが大事だと思います。